アクロイド殺し
自分の価値観で命の軽重を決めるタイプのゴーイングマイウェイな探偵
更新をサボっていました。 名前だけは知っている『アクロイド殺し』ですが、周りに推理小説を読む人がいないためどんな話かまったく知らない状態で読むことができました。
※以下、ネタバレしまくっています。
⭐️ざっくりあらすじ⭐️
愛した女性が自殺してしまい悲嘆に暮れる金持ちの地主じいさんロジャー・アクロイド。女性は何者かに脅迫されていたらしいが、脅迫者の名前が記された手紙を読む前に、ロジャーも殺されてしまう。
ロジャーの親友たる語り手・ジェームズは静養に来ていたポアロの助手として正確な記録を取っていくことに……。
感想
アガサ・クリスティ作品は『そして誰もいなくなった』『オリエント急行殺人事件』を過去に読んだことがあるため、ポアロとは二度目ましてです。
ちょうどこの作品を読む直前に『都市伝説解体センター』というゲームで遊んでおり、意図せず2連続で「犯人は主人公でしたオチ」を引いてしまった……。
しかしミステリとしての完成度は(その二つを比較するなという話ですが)当然『アクロイド殺し』は素晴らしく、薄皮を剥ぐような慎重さで語り手たるジェームズへ疑念が深まっていく構成が面白かったです。
信頼できない語り手というトリックを際立たせるためなのか、殺されるのはタイトル通りのアクロイドだけと非常にシンプルな殺人事件(?)です。
私は金田一耕助シリーズが大好きなのですが、金田一はだいたい連続殺人を取り扱う(※本陣とかそうでもないけど)ので、1つの殺人について深く突き詰めていく本作は古典的名作なのに新鮮な面白さを感じて読めました。
特に魅力的なのが、地の文から語り手である医者・ジェームズの几帳面な性格が伺える点です。几帳面でやや神経質で、姉のキャロラインと比較した時に「沈黙は金」であることをよく理解している。そこが叙述トリックに絡んでくるところが面白いと思います。コイツならこういう手記を残しそうだという納得感があります。
最後の章「弁明」では、意図して排されていたジェームズの内心や性格についてが簡潔かつ明瞭に示されるので答え合わせの爽快さがマシマシです。
「わたしは馬鹿ではありませんよ」という一言がジェームズの性格を最も如実に表しています。要するにプライドが超高くて、高潔であろうという意識は持っているけど俗物な面もあって、しかしその自分では認め難い欠点が他人の目に晒された時は極端な手段を取る人、と受け取りました。
ほかの登場人物については、女性陣がみんなあまり性格が良くないというか、色んな側面を持っている一人間として描写されているなぁと感じました。
これは以前に読んだ2作には感じなかったことです。『そして誰もいなくなった』とか、極限状態であっても人間はそうはならんやろの連続なので……。
ポアロについて意外だったのが、最後にジェームズに対して「睡眠薬の飲み過ぎという方法もあるでしょうね」とあまりにもド直球に自殺を勧めている点です。コナンは犯人が死なないようにめっちゃ気をつけるし、金田一は犯人がよく自殺しますが一応「あちゃ〜」みたいなポーズは取ってます。むしろ自殺推奨!ってのは初めて見ました。
『オリエント急行の殺人』の時は被害者がカス男だったとはいえ加害者を許していたので、司法より自分の価値観で命の軽重を決めるタイプのゴーイングマイウェイな探偵ですね。
ハヤカワのKindleセールに合わせて買った本作ですが、私がこの世の常識を知らなさすぎてクリスティ=推理小説と思い込み、『春にして君を離れ』も一緒に買ってしまいました(後からググってロマンス小説だと知った)。 そちらはまだ開けていないので、またぼちぼち読み進めていきたいと思います。



