そして誰もいなくなった
各殺人が地味
※本文中に出てくるAmazonリンク等はアフィリエイトではなく、私に一銭も入らないので気にせず踏んで大丈夫です。また、本文には元気なネタバレを含みます。
名前だけなら全人類が聞いたことあるのではないかという本作。私は読んだことがありませんでした。
U・N・オーエンって、『そして誰もいなくなった』の犯人(仮)の名前だったんだ!?小学6年生で東方Projectを知ってからというもの『U・N・オーエンは彼女なのか?』しか知らない状態で26歳まで生きてしまったのですが……。
そのくらい前知識がない状態で購入して読み終わり、「こんなん誰にもわかるわけないやろムッキ〜〜」となったのですが、Wikipediaを読んだら読者にも分かるように伏線が張られていたと記載されており、大敗北です。
とはいえ、推理小説で”勝利”できた経験もあまりない(純粋に読んでる数も少ない)ので傷は浅いです!(ほんまか?)
読む前の私の状態
- 推理小説は金田一耕助シリーズしかほぼ読んだことがない
- アガサ・クリスティは『オリエント急行の殺人』だけ読んだことがある
- 海外文学もほぼ読んだことがなく、「聖書・シェイクスピア・マザーグースの3つを知らない方が英文学をお読みになるのはスタートラインにも立っていません」という大学時代の英文学科の講義でもらった言葉のせいで斜に構えている
⬆️これで立ち向かえるわけがなかろうて。 しかし、立ち向かえなくてもスタートラインに立てていなくても、受け取れるオモロさの絶対量が減っていてしまっても尚面白かったです。
あらすじ
噂多き孤島に呼び出された10名が、「10人の兵隊さん」という縁起のよろしくない童謡になぞらえてどんどん殺されまくり疑心暗鬼に陥る
感想
金田一を読んでいる時、声を大にしてふれまわっていたのですが、私は✨見立て殺人もの✨がだーいすきです。『獄門島』や『悪魔の手毬唄』など禍々しく気色悪い見立て殺人ものは想像上にも楽しく、映画化されたりなどすると非常に画面映えして華やかなキモさです。
それに比較すると『そして誰もいなくなった』は「こんなに地味な見立て殺人があってええんか?」と思うほど各殺人が地味です。実際の童謡を題材としているからでしょうか?(『悪魔の手毬唄』は架空の手毬唄なのでこんなんあってたまるかという怖さに仕上がっています)
それとも本作と『悪魔の手毬唄』のあいだの20年で見立て殺人ものが大流行してインフレして派手になったのでしょうか……。
しかし、地味ながら10人も死ぬのでスピード感に溢れており退屈はしません。10人もいるので導入パートは冒頭の登場人物一覧と行き来しながら「こいつはどなた?」を繰り返すことになります。10人死んでからの解説パートも貧相な読解力を置いてけぼりにしながら爆速で進みます。
各トリックの可否や登場人物の動きの現実味については推理小説に詳しくないので特に突っ込めません。が、「3つの伏線」のうち1つは分かるけど2つは上記に記載のまさに「知識不足で楽しめなかった」の典型でした。
キリスト系の大学だったので嫌々ながら聖書の授業を必修で受けていましたが、カインの刻印が体のどこにあったかなんて記憶の片隅にも残っていません……。
「燻製ニシン」の意味も初めて知りました。
物語について。
初めて見たものを親だと思う雛鳥なので、「金田一だったら7人目くらいで計画が狂って見立て殺人と外れた状況が起きるな」とか思ってしまいますが、本作の犯人は非常に頭が切れるので10人全員見立てにあわせて殺せています。人間観察力と実行力が高すぎる。
殺人の動機も「人を裁きたい!殺したい!」の2つで、それを満たせるようにと立ち回った準備期間のことを思うと相当な頑張りです。怨恨感情があればやりきれるだろうけど、なしでやれてるので「頭がいい奴って執念もすごいな……」と思いました。
本作は、人間の紡ぐ物語を楽しむというよりは解けない推理に読者が挑むという意味で面白く、動機がヒューマニティがあるとか殺人の派手さにドン引きするとかそういう類ではありませんでした。
登場人物について。
女性陣は3人しかいないこと・それぞれのキャラが被ってないこともあり何とかなったのですが、カタカナへの弱さから中盤くらいまでドロア元警部とロンバートが脳内でごっちゃになっていました。
好きなキャラは誰か?について考えてみたのですが、あまりに全力疾走で殺されているのもあり、どの人が特に好きという気持ちは持てませんでした。ただ、ヴェラは嫌いです。心の弱い女が嫌いなので、その点においてのみエミリー・ブレントのほうが好きです。
また、マッカーサー将軍が途中で狂ってしまうのですが、狂い方が中途半端で狂わせた意味をあまり感じられませんでした。金田一ならもっと派手に発狂する。
他の人の感想を見ていると、早川文庫版には赤川次郎のあとがきがついている……らしいのですが、電子書籍版にはありませんでした。吸血鬼シリーズも泥棒シリーズも小さい時に大好きだったのでついててほしかった。
次は同じく評判の高い『アクロイド殺し』を読もうかなと思います。


