感想記事 / 本

飯待つ間

友達がいっぱいいていいな〜

無類の食いしん坊であった子規は、なかでも大の果物好きで、その食べ方も芯を噛み皮を吸うという徹底したものであった。

読んだきっかけ

元々随筆(エッセイ)はわりと好きで、『ばななブレイク』(よしもとばなな)・『好きになってしまいました。』(三浦しをん)・『物語のなかとそと』(江國香織)など女性作家のエッセイはいくつか読んでいました。

一方で男性作家はというと寺田寅彦の随筆を昔読んだくらい。自分が女だからというのもあるのですが、女性作家の生活や考えていることを覗ける方が面白いと思っていました。

で、正岡子規といえば国語便覧で名前を見たことがある・野球の人 くらいの雑知識しかガチでなく、「こういう有名な俳人ってどんな生活をしてたんだろ?」とふと疑問に思い手に取ってみました。

全体のざっくり概要

  • 収録されている作品は全部で29本
  • 文芸誌『ホトトギス』に掲載されていたもの中心で、他雑誌に寄稿したものもいくつか
  • ①軍中新聞記者としての記録「従軍紀事」、②病と共にある生活を記した随筆、③自分の好みやある一つのテーマについて思索した随筆、④今朝あった夢を書きましたみたいな空想上の散文 の大きく4種類の文章が収録
  • 高浜虚子・河東碧梧桐・伊藤左千夫など『ホトトギス』に作品を掲載していた、子規の弟子がわらわらと出てくる

👑主観だけで選ぶ特に好きな作品

🥇墓
🥈四百年後の東京
🥉車上の春光

各作品の感想

29本も入ってるのと、とても短い作品もあるので書き留めたいものだけ書いてます。 正岡子規や俳句のことを知らなさすぎて前提知識が抜けている可能性:特大です。

墓

死んだ男が自分の葬儀〜一周忌〜己の墓が忘れ去られるまで、を草葉の陰から眺めてぼやいている短編です。

角川文庫から出ている、谷川俊太郎著『空の青さを見つめていると』に似たような詩が入っていた気がするのですが、手元に本がなく確証は持てず……(発掘できたら追記します)。

常に死を意識して暮らさざるを得なかった子規はこれの他にも『死後』『病牀苦語』など己の死と向き合う作品を書いており、なかでもこれが一番ユーモラスなので好きです。やけっぱちのユーモアを感じる。

四百年後の東京

青空文庫でも読めます。

主観なんですが、「100年後の未来を大想像!」みたいな記事って平成後期くらいから見かけなくなったように思います。 あまりに科学の進歩が早足で、人々がついていけなくなったからでしょうか。

今作で子規は100年と言わず、大胆にも400年後の未来を想像して書き連ねています。1899年に発表された作品なので2300年の日本……。

富国強兵を是とする明治政府の世にあって、 日本が強国を打ち倒した記念に作られた像など、おそらく現代人は未来予想図に含まないであろうものが東京湾に並んでいます。

カラーの写真館や昇降機(エレベーター)も登場します。日本初の電動式エレベーターは1890年らしく、この作品の頃にはもう存在していたんですね。

何の衒いもなく未来を想像できるところに心の豊かさがある一方で、「しなぬくすりをうるみせはなし」とも書いており、医療の進歩には悲観的な面が、病と戦っていた正岡子規の夢を見きれていない部分だと感じました。

車上の春光

子規が弟子に連れられて、茅場町の伊藤左千夫の家へ車で向かう短い随筆です。

子規の家は今の台東区根岸2丁目(「子規庵」として現存)、左千夫の家は今の墨田区江東橋3丁目にあったようです。歩いて1時間半、車や電車だと30分かからないくらい。

空想の上ではなく、実際に子規が病を押して外出して書いた作品のようで、とてもこまごまと街の描写がされています。

突然伊藤左千夫の家を訪れて驚かせてやろう、といういたずらな子規の試みに、赤木格堂・香取秀真の2人が付き添います。 この作品に限らず弟子が多くて、さらに彼らが交代交代で見舞いに来てくれるともあり驚きます。友達がいっぱいいていいな〜(?)

私はオタクの身内話を聞くのが好きで、『裸一貫!つづ井さん』みたいな漫画をよく読みます。同じノリで、子規の生活のごく狭い範囲が克明に描写されている点がお気に入りです。

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